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タスマニア島のオーバーランドトラック
2016.08.25

タスマニア島のオーバーランドトラック

なぜタスマニア島へ行こうと思ったのか?きっかけは、とあるウェブサイトの世界のトレイルを紹介する記事だった。そこには、Tour du Mont Bancや、Pacific Crest Trailといった錚々たるルートと並んで、タスマニア島のオーバーランドトラックが紹介されていた。世界遺産のタスマニア原生区域内を縦断する65〜80kmのロングトレイル…これまで特段の興味も無かったオーストラリアの離島に、がぜん興味が沸いてきた。そこからは勢いに任せて下調べをし準備を行い、諸々の予約を済ませ、2016年3月15日、ついにスタート地点に立つことになった。


5泊6日で80kmを歩く行程は、私たちにとって初めての経験だった。北のクレイドルマウンテンから南のレイクセントクレアへのワンウェイということと、1日に入山できる人数も制限されているため、日中歩いている間は、他のハイカーに出会うことは滅多に無かった。点在する異国情緒たっぷりの山々、美しい草原の道と池塘の台地、ブナやユーカリの森、シダ、苔、滝、湖…バリエーションに富んだ大自然の景色を独り占めしている気分を味わえた。







テントで眠った夜は、不気味に鳴きわめく動物の声と気配に少し怯えた。草原で食事中のウォンバットを見つけて大興奮した。日本では見かけない鳥が目の前をのんびりと歩いていく。ここでは野生動物が私たちを観察しているに違いない。私たちも小さな小さな存在のひとつなのだと、改めて思う。むしろ人間はとても不自由だとさえ感じた。20Kg近い重さのバックパックを背負わなければ、ここに踏み出せないのだ。




 

それでも思い切って踏み出せば、日々刻々と現れる景色に感動し、満喫しながら80kmを歩くことができる。食べて、歩いて、また食べて、眠る、という実にシンプルで贅沢な6日間だった。メインのルートは良く整備されていて、自らの衣食住を背負って歩く体力があれば、どんな人も踏破できるだろう。道中で食料を調達することはできないが、水は山小屋の雨水タンクから補給することができる(浄水するか煮沸することをおすすめする)。メインのルートから枝のように延びる複数のサイドトリップも楽しんだほうがいい。クレイドルマウンテンの山頂へ向かうサイドトリップでは、両手両足を使った岩場歩きでスリルを味わった。滝へのサイドトリップでは、ちょうど雨だったため森がしっとりと潤い、度々立ち止まっては苔や植物に見入った。すべてのサイドトリップとメインルートを合わせれば100kmほどにも距離は延びる。経験豊富なハイカーもきっと存分に楽しめると思う。



タスマニア島は、山はもちろんだが、街にもゆったりとした空気が流れていて、この旅全体を通してとてもリラックスして過ごせた。街のスーパーや酒屋で地ビールやタスマニアワインを探して買って味わうのも楽しかった。街なかの朝市で買ったオーガニックのりんごやイチゴ、ラムのパテのハンバーガーは驚くほど美味しかった。タスマニアサーモンも美味しくて何度も食べた。

是非また行く機会を作りたい。その時は、同じ山小屋に連泊して多くのサイドトリップを往復してみたり、ハイカーたちとのコミュニケーションを楽しんだり、読書をしてみたり、等々もっとゆったりのんびり時間をかけてハイクを楽しんでみたいと思う。



戸矢崎孝子
使用モデル:バルトロ85 / ディバ60