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キャンプの夜を100倍楽しく!星空観察のススメ
猪俣慎吾
アウトドアで天体ショーを楽しむ!星空観察の装備&プランニング

 

2024.09.25

子どもはもちろん、大人の好奇心をも刺激し、自然や自然科学への興味をかきたててくれる星空。そんな星空を楽しむ絶好の機会がキャンプだ。キャンプ場に出かけ、夜空を見上げてみれば、そこには大地を包み込むような宇宙が広がっている。きらめく無数の星々に、流れては消える流れ星……今度の週末、星空観察が主役のキャンプに出かけよう。
「暗い」&「広い」場所を目指して
キャンプ場で星を眺めよう!星や宇宙、天文分野における幅広い知識をもとに星空をガイドしてくれる星空案内人®︎の猪俣慎吾さんとやってきたのは、新潟県村上市にある「都心から最も近く、最も暗い場所」といわれる屋外交流広場。「都心から最も近い」といっても5時間超かかるのだが、標高400mの高台にあって周囲が開けており、市街地が遠く町灯りに邪魔されない稀有なロケーションであることから、関東近郊のアマチュア天文家がやってくるという天体観測スポットだ。
キャンプコーディネーターとしても活躍する猪俣さんの本業は写真家。キャンプを中心としたアウトドアシーンの撮影を幅広く行っており、オンオフを合わせて年間100日以上をキャンプ場で過ごしているとか。2017年に星空案内人®︎の資格を取得したことで星空にまつわる撮影や観察活動にも取り組むようになり、現在は自らが開発した「プラネタリウムテント」を携えて全国を巡り、天の川の解説も行っている。そんな猪俣さんによれば、星空観察キャンプの醍醐味は「非日常のロケーションに身を置きながら、星空という絶景を独り占めできること。自分らしいペースで星空と対峙できること。天候や地形など、自然を読むスキルを問われるところ」。見る場所や時期、時間帯によって、星空の表情が全く変わるところもおもしろさだとか。
「国内外のさまざまなロケーションでキャンプをしながら星空を観察してきました。見渡す限り一切の人工物がないモンゴルの大平原やオーストラリアの砂漠では、天の川が月ほどに明るく、その明るさで影ができるほど!地球上で影を作り出すものは太陽と月、金星、天の川の4つがありますが、残念ながら日本では天の川で影はできません。天の川によってできる影を初めて体験しました」

夜空でそれほどの存在感を放っているからか、アボリジニには天の川にまつわる神話や伝承が多いという。異国の文化が星空に反映されているところも、猪俣さんの好奇心を刺激するのだろう。
星空観察の第一歩はプランニング
最高のシチュエーションで最高の星空を眺めるためにはプランニングが欠かせない。初めに考えるべきは、「何を」「いつ」「どこで」見るのか。

「月を見るのか、星を見るのか、流星群か。それが決まったら、一般的なキャンプと同様に『いつ』『どこで』を考えます。天気がいい日を選ぶのはもちろんですが、星や天の川を見るとなったら新月がいい。月が明るすぎて星を邪魔するからです。新月でない場合はあらかじめ月の出没時刻を調べ、月の明かりが邪魔にならない時間帯を狙います。ロケーションを決める場合、この広場のように視界が広く開けていて街灯を拾わない場所がおすすめ。空気が澄んだ山の中もいいですが、木立に遮られるので低空の天体は見えづらくなります」
天気と合わせてチェックしたいのが雲の量。39時間前からの雲量を予報するウェブサイトもある。

「気象庁による気象予測モデルの雲量の数値を図式化した『GPV気象予報』なら、雲の量が一目でわかり便利です。今日の雲量予報は20%ですが、できれば0%の日を狙いましょう」
あると便利!星空観察の装備
「倍率はそれほど高くなくていい(2〜8倍程度)ので、その分、明るいものを選ぶのがポイント。望遠鏡より視野が広く、星座や天の川、星と星雲星団の位置関係を確認することができます。また、星座や惑星、彗星などを識別できる星空観察用のアプリを、事前にダウンロードしておきましょう。センサーとGPSにより、端末を空にかざすだけで星座の名前や特徴が画面に現れるアプリが便利です。
また、赤色のヘッドランプもしくは懐中電灯も必携です。白色の光は暗闇に慣れた目には刺激が強すぎる。赤色の光なら夜間視力を維持しながら、暗闇で作業することができます」

双眼鏡など星空観察ツールに加え、テントにタープ、スリーピングバッグ、クッカーに予備のガスに、各種ペグとハンマー………キャンプ道具も必要だ。ついつい大荷物になりがちなキャンプシーンで活躍するのが、さまざまなツールをまとめて収納でき、そのまま持ち運べる「アルパカギアオーガニゼーション」。年間100日以上をキャンプ場で過ごす猪俣さんのギアは、大量ながらきちんとオーガナイズされていた。クリアビューの蓋を備えた「ギアボックス」に入っているのは、用途ごとの各種ツールが収められた大小の「ギアポッド」。蓋がメッシュになっているから、中に何が入っているのか一目でわかるのが便利とか。中身がパンパンに詰まった「ギアボックス」は、140リットルの容量を誇る「ギアワゴン」に乗せて運ぶ。開口部が大きく開くソフトケースの「ワイドマウスケース」にはスリーピングバックやエアマット、シュラフカバーを、軽量アルミニウム製の「ギアバスケット」にはテントの中に敷くラグやマットなどをまとめて保管。車の荷室からフィールドへそのまま運搬できるのが、「アルパカギアオーガニゼーション」の特徴だ。
キャンプ場の上には、壮大な宇宙が広がっている
星空が主役のキャンプでは、現地到着は夕方くらいを目安に。猪俣さんの場合はロケーションの候補地を3つくらい考えておき、ギリギリまで天気予報をチェックして、その日ベストなロケーションに向かう。

「星空観察に適した時間帯は日没2時間後から周囲がうっすら明るくなる時間まで。夕方、キャンプ場についてテントを設営したら、星が出るまではのんびりアウトドアを楽しみましょう」
猪俣さんが振る舞ってくれたアウトドア料理を楽しみ、コーヒーを飲み、ゲームをしながら待つこと数時間。すっかり夜も更け、眩い月がようやく西側にある山の陰に隠れてくれた。時刻は深夜12時近く、漆黒の空に現れたのは、淡い雲のような、白い帯状のもの。白い帯は南の低空から頭上を通り、北の地平線まで延びている。天の川だ。

「星の案内人®️になって驚いたのは、天の川を見たことがないという人が少なからずいることでした。実際、日本人の7割が天の川を見られない環境にいるというデータがあるんです」。そう言いながら、猪俣さんが双眼鏡を渡してくれる。

「淡い雲のように見えますが、双眼鏡を覗いてみると無数の星の集まりだということがわかりますよね?天の川の正体は、2000億個もの星(恒星)が集まる銀河です。いま僕たちは太陽系が属する銀河系の一部を、天の川として見ているというわけです」
Photo:Shingo Inomata

「さて、宇宙にはこういう銀河が1兆、あるいは2兆も存在すると考えられています」

仮に2兆として計算すると、宇宙に存在する星の数は4×10の23乗、つまり4000垓(がい)。

「4000垓の星ってどのくらいか想像つきます?地球上にあるすべての砂、サハラ砂漠やゴビ砂漠……すべての砂漠にある全部の砂を集めたよりもたくさんの星が宇宙に存在するということなんです」

話が壮大になりすぎて理解が追いつかず、しばしの沈黙。天の川を見上げながら感じるのは、とてつもなく壮大な宇宙とちっぽけな自分がリンクしているという実感だ。キャンプ場が宇宙とつながる場所とするなら、タープの下やテントの中にいるのはあまりにももったいない。暗くなったらテントから飛び出し、空を見上げて星の物語に耳を傾け、理屈抜きに宇宙をダイレクトに感じる。それこそがキャンプの醍醐味ではないだろうか。
秋こそ、星空キャンプに出かけよう!
猪俣さんに導かれ、圧倒的な体験をしてしまったキャンプの夜。天の川や七夕というキーワードから、星空観察=夏というイメージを持っているかもしれないが、星空観察キャンプは空気が澄んでくるこれからの季節こそおすすめだ。「秋の夜長」という通り、日が短い秋冬は早い時間帯から天体観測を始められるし、太平洋側では湿度が下がり雲の量が少なくなるので、星がくっきりと見えるのだ。

「秋には秋の大四辺形やギリシャ神話に登場するペルセウス座やくじら座が、冬にはオリオン座にシリウス、すばるなど、それぞれの時期の夜空を彩る星々が待っています」

もちろん、天の川だって流れている。秋の天の川は夏ほど明るくはないが、北の高い位置にあってほぼ一晩中、観察することができる。

「防寒対策が必要になりますが、それもまた楽しいのが秋キャンプ・寒中キャンプです。煙突用の穴付きタイプのテントのなかに小型の薪ストーブを持ち込んで、暖を取りながら星が現れるのをのんびりと待つ。そういう楽しみ方ができるのも、これからの時期ならでは」

「キャンプは夏だけ」なんて言わず、この秋はキャンプ場に出かけてみよう。星空を見上げ、宇宙とのつながりに思いを馳せてみれば、新しいキャンプの楽しみかたを発見できるはずだ。



アルパカギアオーガニゼーションをすべて見る>>

猪俣慎吾(いのまた しんご)

東京都出身。写真家、キャンプコーディネーター、星空案内人®︎。広告写真家の中村章三さんに師事した後、独立。20代でキャンプに熱中し、好きが高じてその道のプロフェッショナルに。現在はキャンプを中心としたアウトドア&料理のジャンルにおいて、広告からエディトリアルまでの撮影を幅広く行っている。2019年、自ら開発した「プラネタリウムテント」を使って天の川観察の活動をスタート。自著に、写真集のようなキャンプ場ガイド『絶景CAMPGUIDE』(JTBパブリッシング)がある。

Text:Ryoko Kuraishi
Photo:Hinano Kimoto
TopPhoto:Shingo Inomata